「おそ松さん」15話B しんどい私が本当に欲しいものは何だったのかという話
あれBって呼んでいいのかな、Cかな、微妙なところですがつまりは
「チビ太の花の命」です。こんにちは。
一言で言えばしんどくてしょうがない話だったんですけど……。
いい話だった……いやいい話かこれ?いい話じゃなくない??んんん??
っていう時間が必要で遅くなりました。はい、今回は
チビ太とカラ松の二人についてがメインです。
チビ太とカラ松が本当に欲しかったものは何だったのかという話です。
今回の話は原作にもあった話だということは知っているのですが、未読です。
そこんとこよろしくお願いします。
今回のあらすじですが、
・チビ太が最高のおでんを作ろうと迷走する
・そんな時、彼の前に一人の可愛らしい少女が現れ、自分はチビ太に水をもらい救われた花の精だと名乗り、彼をデートに誘う
・それを見ていたカラ松は、枯れかけの花を探し酒(ウィスキーかなブランデーかなそのへん)を与える
・おでんのことしか考えていなかったチビ太は、次第に花の精と楽しく遊ぶことができるようになるが、彼女は花としての限界を迎え消えてしまう
・カラ松が酒を与えた花は見た目も心も醜い花の精として彼の前に現れ、わがままを言って彼を振り回し、そのあげくに結婚式をあげる
というあたりです。
完全に「良いおじいさんを真似した隣の意地悪なおじいさんが失敗する話」の形ですがそれはまぁ良いとして。(ついでに昔話には「心の美しさが見た目の美しさ」というルールも存在します)
はっきりとこの二人(というか二組)は対比の関係にあります。
チビ太は、元々ひとりぼっちのいじめられっ子で、成長してからは大好きだったおでん屋として一国一城の主となり、まぁはっきり言って、作中で一番と言っていいまっとうな大人である、「きちんと大人になれた人」だと私は思っていました。
そして彼も、そう思っていたと思います。
そんな彼の前に突然現れた花の精は、「おでんがすべて」と言う彼を外へと連れ出し、もっと楽しめと言い、大好きだと言った。
彼にとってのおでんは、幼馴染であり、最終兵器であった。そこに、彼を愛してくれる、彼だけを見てくれる存在が現れた。
そして、彼は「お前がいればおでんなんか」と言わされてしまう。
彼が本当に欲しいものは、おでんなんかではありませんでした。おでんは欲しいものの代替でしかなかった!!!!
それは今までチビ太がずっと見ようとしてこなかった現実です。
そしてその「本当に欲しかったもの」は、彼の前から消え去っていきました。
おでんが本当に彼が求めていたものではなかったという証拠に、彼のおでんは「しょっぱい」「腕が落ちた」
ここで、彼女と遊んだことによってリフレッシュした彼が最高のおでんを生み出したのであれば、この話は良い話だったかもしれません。しかしそうではなかった。
彼は「おでんがすべてを与えてくれる、おでんが自分のすべて」という今まで信じていたことを破壊され、本当に欲しいものを見せつけられ、さらにそれを失いました。
おめでとうチビ太!!ようこそディストピアへ!!君が見ていたおでんという名のユートピアは崩壊した!!すべてはここから始まるんだ!!!
さて、対するカラ松くんです。
チビ太とカラ松の間には、ひとつのラインというか、があります。
5話、9話と来て、今回。今までのいろいろから「おそ松さん」が単なる短編オムニバスではなくつながりがあることは自明ですので、チビ太とカラ松の間にも、何らかの変化が続いていると見て良い。
まず今回、カラ松はチビ太を一人で追いかけたわけですが、これ、やっぱり心配だったからではないかなと思う。
私は9話でカラ松くんに対してチビ太が親切振りかざしてマウント取ろうとしたの忘れてないですけど(今回で許しました)、とりあえず方法はどうあれ、チビ太は作中で数少ないカラ松を気にかけてくれる人です。
そして彼が見たのは、チビ太が、水をやった花に、好きだと言われ、デートに誘われる姿でした。
さて、カラ松くんは、兄弟たちを愛しており、また愛されたいと思っています。
彼は兄弟達に、信じてるぜと告げ、ほしいものを与えようとし、報告しろと言われればその通り自分のことを話し、また、その妨げになっていることがあるのなら修正するから教えてくれと言います。
また、そもそも彼は、注目される、話を聞いてもらう、愛されるためには「何かしらの努力が必要だ」と考える傾向があります。だから彼は凝った話し方をしようとするし(そのせいで弾数を撃てないのですが)、格好つけようとします。「何がだめなのか」「悪いところがあれば言って」というのもその延長上です。という話は前にもしました。
彼の世界では、好意というのは、手をかけた分返ってくるものです。
それがですよ?チビ太は花に水をやっただけで、美しい女の子に好意を持たれ、しかも彼がわかるようにそれを示してくれたわけですよ?
「好きだから」「デートに行きたい」
(残念ながら「痛い」がわからないようにカラ松くんは直接的かつ彼の考える「好意」の範囲に入る情報でないと認識できない傾向があります)
衝撃ですよ。そりゃ必死に探しますって。だって兄弟に対してと生産効率が違いますもん。
問題はその対象はあんな女でもいいのか?ということですが、
私は前回、「カラ松は世界を肯定している。彼が愛されなくても、太陽は輝き、空は青く、風は吹く、ということを知っている」という話をしました。
そのとおり、彼は否定をしません。チビ太の「最高のおでんは目に見えない」にもなるほどとうなずく。その通りです。彼は目に見えるものに拘泥しない。
加えて、「すべてを愛する」境地に至っているカラ松にとって、その対象が兄弟か兄弟でないかはさほど大きな問題ではないはずです。もちろん、そりゃ兄弟は大切ですが、既に彼は六つ子に依存していません。14話でのおそ松チョロ松一松の六つ子依存を見ればその差は大きい。
・元々手間暇かければ愛が返ってくるはず思考だった彼に、そのとおりの女の子がやってきました。
・彼女の彼へのアプローチ(嫉妬、あなたがいないとと頼られること)は彼にとって非常にわかりやすい「愛」です。
・カラ松くんは否定をしません、世界の全てを肯定します。
はじき出されるアンサーは簡単です。
そんな(彼の中では)きちんと整合性のとれた愛があるときに、兄弟の意見聞いてる場合じゃありません。
彼らの制止はカラ松にとって、彼の欲しい「愛」ではありません。
彼が欲しい愛の形は、こういうあり方だった。
彼は間違っていません。
彼が世話をした、その分「あなたがいないと死ぬ」という言葉が返ってくる、それは一つの愛であることは間違いないし、カラ松くんも花の精もそれによって飢えずに生きていくことができるでしょう。
この件に関して、六つ子の正義であるチョロ松はほとんど口を挟んでいません。
彼が「カラ松兄さん」と口にしたとき、そこには彼が否定できない「正義」があります。トト子ちゃんが魚路線をやめたときのように。
問題は、
この花がただの花であり、そのうち失われることが予想されることと、
そこに至ってしまうまで彼を止められなかったことにあります。
チビ太と同じ、その花はおそらくやがて枯れます。終わりがあります。
彼はまた、チビ太と同じく、本当に欲しいものの欠乏へと落下してくるでしょう。
しかし、それは今までと同じ地平ではありません。彼は自分が欲しかったものの形と、そしてそれがもたらすものを知っています。
また彼が、何を欲しがっていたのか、兄弟たちは知っています。
一松は盛んに「っぽい」と繰り返しました。一松は最も兄弟をよく見ているという話も前回しましたが、彼の考えているカラ松像と、今回のカラ松の行動はそのままだった。
つまり、彼の姿はきちんと「見える形」になって、兄弟たちの前に晒されたわけです。もう、後戻りはできません。
今回、ほとんど初めて彼は兄弟の制止を振り切って走りぬけました。そして、ひとりぼっちで結婚しました。彼はそれを選びました。
これからカラ松は、この荒廃から出発しなければなりません。
でねー、今回のカラ松と花の精はまぁはっきり言って「共依存」なんですけど~
これがね、あまりにもリアルすぎてすごく怖いんですよ。
この「あなたがいないと死んじゃう」って、その言葉が欲しい時にきちんとはまってしまうと、本当にドツボなんですよ。
「あなたがいないと死ぬ」を振りかざす人にただ会うだけでは、共依存はおこらない。ただそれが、「あなたがいないと死んでしまうと言われたい」人に、ぱんと当たった時に、それは威力を発揮します。
そしてそれが愛だと考えてしまっている時に、制止の言葉は逆の意味に聞こえます。
「私のことをあんなにも必要としてくれるあの人を私から取り上げようとするなんて、ひどい人だ、私のことを愛していないんじゃないか」
本当に欲しいものが、どんどんわからなくなっていく。これでいいんだ、これでいいんだと、自分を安心させ始める。
なんでこんなに語ってるかって?????私がやったからだよ!!!!!はいはいそーですよ悪いか?????
本当にドツボってる時はまじでアレ、わりと満足なんですよ。自分が本当に欲しいものがそういう「あなたがいないと死んじゃう」だと思ってるから!!思い込んでるから!!しかもそれがきちんと貰えているとき、人は疑問を持つことをしないから!!システムオールグリーンだから!!
と、友人にズブったあげく当時の彼氏が何考えてるのかが全くわからなくなり振った私が言うんだ!間違いない!!
というわけで今回の話は本当に欲しいものを得たと思いきや失う話だ!!というわけでした!!
今回がみぞおちに入った人は個人的に思い当たるところのある人が多いのではないかと思うけれどどうなんでしょうね。
いやー次回が怖いな。
ちなみに当時ズブってたやつは、んーなんでかわかんないけどしんどいな、あっこれダメなやつじゃね??と気づいた頃に馬鹿みたいに受験勉強したせいで彼女と話す機会がガッツリ減りついでに高校も別れたので大事に至らず終了しました。
よしカラ松くんも受験勉強しよう受験勉強。あれはいいぞ。勉強はいろいろ救うぞ。
お粗末さまでした。